生成文法研究

研究論文

「辞書と統語のインターフェイス--英語の他動性交替現象と日本語の複雑述語形成との比較研究」

英語の起動使役交替と中間態構文の派生に関する経験的議論に基づいて、語彙構造と統語構造との関係についての二つの中心的問題、すなわち(1)述語主要部の意味特性がどのような形式で辞書に記載されるかという問題、そして(2)述語主要部の意味特性がどのような形式で統語構造に反映されるかという問題(リンキング問題)について考察した。英語の交替現象の裏には日本語の使役の形態素(-sase)等に対応するゼロ形態素が関わっていることを経験的に例証し、もし交替現象がルート要素とゼロ形態素とが融合する統語プロセスであるならば、辞書には計算部門は不要で「身軽な辞書(impoverished lexicon)」を仮定すべきであることを主張した。 『リージョン/カルチャー/コミュニケーション—現代社会の諸相』国際広報メディア・言語文化部研究報告叢書(北海道大学)66、72-103、2006.6 (pdf

「生成文法と語用論--共感度研究の再評価」

この論文は、生成文法における言語使用の新たな経験的研究の方向を、認知システム(言語機能)と運用システムとの相互関係という観点から探る試みである。機能文法論の枠組みで進められてきた一連の視点現象についての研究を、発達心理学等の心理学諸分野で仮定されている「心の理論」という認知メカニズムを視野に入れて再評価し、これらの研究が認知システムと運用システムの関係を探る上で貴重な経験的問題を提起する可能性があることを議論した。The Northern Review (北海道大学英語英米文学研究会)30, 47-61、2003.7. (pdf

「非対格性の交替現象」

非対格性の交替現象を動作の様態動詞(runタイプ動詞)と音放出動詞(roarタイプ動詞)を例に考察した。これらの動詞は本来非能格動詞と分類されるが、場所変化の表現を補部にとると典型的非対格動詞の振る舞いを示す。この非対格性交替現象を考察する糸口としてこれらの動詞と日本語の「ていく」という複合表現との平行性に着目した。英語の動作の様態動詞や音放出動詞が非対格動詞の振る舞いを示す場合、「いく」に相当するゼロ動詞GOがこれらの動詞と複合体を形成すると仮定することで、これらの動詞の非対格用法で見られる一連の統語現象が説明されることを示した。『英語学と現代の言語理論』(葛西清蔵編)北大図書刊行会、125-138、1999.10.

「動作の様態動詞に見られる非対格性の交替についてー結果の述語構文を中心に」

動作の様態動詞(runタイプ動詞)が示す非対格性の交替現象をHale and Keyser(1993)の語彙関係構造を仮定し議論した。runのような動作の様態動詞は、ある種の補部をとると非対格性が非能格から非対格に変化することが知られている。この交替は、これらの動詞が非対格特性を持つゼロ動詞GOと複合体を形成する結果であると論じた。(The Northern Review (北海道大学英語英米文学研究会)26,13-44、1998.6. (pdf

"On the Small Clause Analysis of the Periphrastic Existential Sentence"

英語の迂言的存在文(Periphrastic Existential Sentence)を生成文法(GB理論)の枠組みで分析し、その特性を考察した。迂言的存在文について提案されている三つの分析(小節分析、名詞句分析、付加分析)を比較し、統語的・意味的観点から小節分析を支持する議論を行った。さらに、迂言的存在文の小節は、considerタイプの動詞補部として現れる典型的小節とは内部構造が異なることを論じ、その分析の経験的帰結を探った。The Northern Review (北海道大学英語英米文学研究会)20, 13-44、1992.67. (pdf

"The Visibility Condition and the Distribution of Clausal Arguments"

英語の節の分布を生成文法(GB理論)の枠組で考察した。名詞の分布上の特性を説明するため、格理論において格フィルターという原則が仮定されている。Chomsky (1986)等で格理論とθ理論の余剰性を解消するという理論上の必要性から、格フィルターを「θ役割付与に対する可視性の条件」としてθ基準に組み込む提案がなされた。この提案が、経験的にも支持され得るものであることを、英語の節の分布を考察することで論じた。『北海道大学言語文化部紀要』19、67-89、1990.1. (pdf

"Two Types of Resultative Construction"

結果の述語を含む構文の統語特性を生成文法(GB理論)の枠組みで考察した。結果の述語構文はその目的語名詞句の統語上の特性を考えた場合、二タイプに分ける必要があることを様々な統語的事実に基づき例証した。さらに、この二つのタイプの構文がどのような内部構造を持つかを論じた。English Linguistics 4, 73-90、1987.11.

「Secondary Predication の統語論」

英語の叙述表現を二次述語に焦点を当て論じた。まず、二次述語について提案されている「叙述分析」と「小節分析」を比較し「叙述分析」擁護の議論を行った。二次述語と分類される三つのタイプの述語表現を比較し、これらが動詞との意味的結びつきの強さに従い統語上階層を成すことを例証した。 『北海道英語英文学』31, 69-83、1986.7.(pdf

研究報告

科学研究費補助金研究

語彙構造と統語構造との関係について (代表)


yamada@imc.hokudai.ac.jp
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